黒き艦娘、闇艦娘との闘いの火蓋が切って落とされる!
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【艦これ】艦これ軽音隊!あたしらの音を聞けぇぇえッ!


 朝――
 日の出の光に照らされてキラキラと輝いている海を見つめながら、天龍はンーッと伸びをする。
 まだ解放されていない第3ドッグの前で、天龍は人待ちをしている。
 海に向かって「フフフ、怖いか?」と言いそうな顔をしながら、天龍は落ち着かない様子で地面をタンタンと踏み叩いている。

「さぁて、今日もクールでホットで激烈ヘビーな一日が始まるぜぇ」

 天龍はたくさんのステッカーが貼られた真っ黒なソフトケースを背負いながら、他のメンバーが来るのを待っている。

「ふああぁぁぁぅッ、クールとホットが混ざったら常温になっちゃうわねー」

 海を眺めている天龍の背後から、龍田の眠たそうな声が聞こえてきた。
 龍田も天龍同様、たくさんのスッテカーが貼られた真っ白なソフトケースを背負っている。

「んもー、天龍ちゃんってば起こしてくれればいいのに。いっしょのお部屋で同棲してる仲じゃない」

「チッ、意味深っぽく言ってんじゃねーよ。姉妹なんだから当然だろうが、相部屋なんてよぉ。んなことより遅せぇよ。ずいぶんと待っちまったぜ」

 龍田は呆れた溜息をつきながら、やれやれな顔をする。

「天龍ちゃんが早すぎるんでしょ? まだ約束の時間まで30分もあるのよ? うふふ、天龍ちゃんったらはしゃいじゃって、かわいいんだから」

「ッ! バカなこと言ってんじゃねーよ! 何が可愛いだ、ふざけやがって」

 天龍は顔を赤くしながらギリッと歯を鳴らした。

「あらあら、もう来てるの? ずいぶん早いわねぇ」

 爽やかな笑顔を振りまきながら、そして立派すぎる大きなお胸を揺らしながら、愛宕が声をかけてきた。
 愛宕は衣装の色と同じ深い青色のスティックケースを背負いながら、天龍達と合流する。

「みなさん、もうお集まりなんですね。早く来たつもりだったのに、私が最後だなんて」

 榛名は小さめのリュックを肩に引っ掛けて、三人ににっこりと笑んで見せた。

「遅せぇぞ、お前ら」

 天龍は後から来た三人を見下ろすように睨みつけながら、不機嫌な声で言った。
 三人は『あんたが早いんでしょ』と言いたげな顔をして、生温かい笑みを天龍に向ける。

「なんだよ? 何か言いたそうだなぁ? 言いたいことがあんなら言えってんだ!」

 妙に喧嘩腰な天龍に、龍田は優しい笑みを浮かべながら静かに話す。

「天龍ちゃんってば、そんなにいきりたたないの。少しヒート気味よ? もっとクールになって」

「うっせぇな龍田! 俺はたぎってたぎって仕方ねぇんだよ! 艦隊の旗艦になって単縦陣でバトルするくらい、全開でたぎりまくりなん! ヒート気味だぁ? 何ぬるいこと言ってやがんだよ。俺はたぎりすぎちまって、メルトダウン寸前だぜ?!」

 興奮しきっている天龍を見て、榛名はクスッと笑んだ。

「さすがは天龍ちゃんですね。そのくらいハートがアップしてた方が、天龍ちゃんらしくて素敵です」

 榛名は天龍を見つめながら、背後に向かって鍵を投げる。
 完全なノールックで鍵を投げ上げた榛名。
 このノールックパスに愛宕が反応していた。
 開放前の第3ドッグの扉の前でスタンバッていた愛宕は、やはりノールックのままパシィッと鍵を受け止める。
 それを見た天龍は、嬉しそうな笑みを浮かべながらチッと舌打ちをする。

「なんだよ、榛名も愛宕も、冴えに冴えまくってんじゃねーかよ。俺よりも上がってんじゃねぇか? スピリッツがよぉ」

「それを言うならスピリットでしょう? スピリッツはお酒、または雑誌のお名前よぉ? っていうか、スピリットが上がるってどういう意味なのかしらぁ?」

 天龍は顔を真っ赤にして地団太を踏み、恨みがましい目で龍田を睨む。

「うッせぇぇぇなぁッ! いちいち揚げ足取ってんじゃねぇよ! いいんだよ意味なんてよぉ! ハートが伝わればよぉ、なんだっていいんだッ! 気持ちが伝わればよぉ、どうでもいいだろぉがぁ! 言い方なんてウワベなんか関係ねぇっつの! 熱い煮えたぎった気持ちが伝わればよぉ、言葉が意味不明だってノープレだぜ!」

「ノープレ? ノープロブレムって言いたいの? 天龍ちゃんってば、略し方が独特すぎて変だよぉ?」

「んがぁぁぁぁぁぁぁぁあああああッッッ!!! うっせぇッッッ!!! いちいちムカつくツッコミ入れんなぁぁぁッッッ!!!」

 キレる天龍。
 そしてキレた天龍をクスクスと笑みながら嬉しそうに眺める龍田。
 ブチギレ天龍はぶんぶんと拳を振りまくって襲いかかる。
 対してクールな龍田は全てのパンチをひょいひょいと軽快にかわしていく。
 さすがは姉妹である。
 龍田は天龍の呼吸を読みきり、放たれるパンチを完全に見きっている。
 これでは一生かかっても天龍は龍田を殴る事はできない。
 とはいえ、天龍もそれを理解しているからこそ、思いっきり龍田に殴りかかれるのでる。
 いくらブチギレていても、本当にぶっ叩こうなんて思ってはいない。
 なんとも仲のいい姉妹である。
 そんな軽巡姉妹を、愛宕は清々しい笑顔を浮かべながら見つめている。

「あらあら、息ぴったりね。まるでダンスを踊ってるみたい。あのふたりのシンクロしたリズムは、誰にもマネできないレベルで完成されてるわね」

「愛宕さん、あのふたりのリズムは完成なんてしていないわ。まだまだ未完成で発展途上、そして進化し続けているわ」

 愛宕は「そうね」とつぶきながらドッグの扉を開けた。

“ぐごごごごごごごぉッ”

 重苦しい重厚な音をたてながら、扉がゆっくりと開かれていく。
 まだ解放前のドッグは当然だが誰もおらず、ほとんど日の光が入らないせいもあり、中は真っ暗である。
 そんな真っ暗闇の中、愛宕は手慣れた感じで扉の横にあるスイッチをオンにする。
 ピカッ! と眩しいほどの光がドッグ内を照らす。
 するとドッグの真ん中に、スタジオさながらの音楽設備が姿をあらわした。
 ドラム、アンプ、スピーカー、などなど、演奏に必要な機材は全て揃っている。

「さぁってとぉ、ちゃっちゃと準備しちまってよぉ、さっさとおっぱじめよぉぜぇ」

 天龍はタタッと走ってアンプの前に立つ。
 そして背負っていたソフトケースを開ける。
 ケースの中からあらわれたのは、漆黒と言っていいほどに深い黒色のギター。
 なんとも存在感のあるギターが、天龍の手によって取り出される。
 天龍は素早くギターのストラップに身を通し、アンプとギターをケーブルで繋いだ。
 そしてアンプの電源スイッチをバチンッと弾く。

“ぎゅわぁぁぁぁん”

 天龍はピックで弦を弾いた。
 まだチューニング前なのだが、ギターによって奏でられた音には全くもって狂いがない。

「やっぱこいつは優秀だぜ。弾くの久しぶりなのに、チューニングしたばっかみたいだ。これなら微調整なしでもイケちまうぜ」

 天龍はギターを構えながら恍惚の笑みを浮かべ、満足げに語った。

「天龍ちゃんったら、前もってチューニングしなかったの? なんて、私も実はしてないんだけど」

 龍田は白いソフトケースを開け、中から眩しいくらいの純白のベースを取り出した。

“ぼぅぉぅぅぅうんッ”

 龍田がベースを鳴らした。
 やはりチューニングが不要なくらいに、音に狂いは全くない。

“バスンッ、ドンドンドンッ、シャラァアアンッ”

 愛宕もドラムを試打する。
 ドラムも調整不用なほどに正確な音を鳴らし、すぐさま演奏可能な状態であった。

「さすがは妖精さん達ねぇ、前回演奏してから結構経つのに、音がぜんぜんズレてないわ」

 愛宕はくるくるとスティックを回転させながら、鼻歌まじりにドラムを叩いている。

「妖精の奴らはよぉ、普段、艦を建造したり修復したりしってっかんなぁ。楽器を作るのなんて朝飯前なんだろうさ」

 天龍は器用に速弾きしながら、ノリノリでソロ演奏をしている。

「天龍ちゃん。楽器を作ってくれたのは家具職人さんよぉ?」

 龍田は意地悪く笑みながら、天龍の速弾きに合わせてベースを弾く。

「うっっっっっっっっせぇぇぇなぁぁぁぁぁぁッ! そうやって正論でツッコミ入れやがってよぉッ! 性格悪いにもほどがあんぞぉッ!」

 天龍は額に巨大怒りマークを出現させて、ビキビキという音が聞こえそうなほどの怒り顔になっている。
 そして凄まじいまでの勢いで龍田を睨みつける。

「だって天龍ちゃん、間違ったことを平気で言うんだもぉん。だから正しい捕捉を付け足してあげてるんじゃない」

「あーあーあーあーあーッ! どうせ俺の言ってることは間違ってるよぉッ! 間違いだらけだよぉッ! 間違いまくりの間違いキングだよぉッ!」

「天龍ちゃんは女の子だから、間違いキングじゃなくて間違いクイーンだよぉ?」

「んぐぅぁぁぁぁぁああああああああああああああああああッ!!!」

 天龍は龍田の正しいすぎるツッコミに完全にキレてしまった。
 ブチギレた天龍は、恐ろしいほどの速さでギターを弾き鳴らす。
 もはや弦を弾いているピックと指が見えないほどの速さで、弦を弾きまくる。

「んふふふふふッ、わたしだって負けないよぉ」

 龍田は天龍の神速度な速弾きに合わせて、ベースの弦を超高速で弾く。
 凄まじい速さで弦を弾いているせいで、龍田の指には残像が生じてしまっている。
 そのせいで、むしろゆっくり動いているように見えてしまっている。

「やるじゃねぇかよ、俺についてくるなんてよぉ」

「うふふふふ、姉妹艦は伊達じゃないのよぉ」

 ふたりのセッションはどこまでも加速していき、まるで人工的に加工した音のような、人が奏でていると考えられないほどの連続音になっている。
 このままでは人の耳には聞こえない超音波になってしまうかもしれない。

「本当に仲のいい姉妹ね。天龍ちゃんと龍田ちゃん」

「そうですね、愛宕さんと高雄さん姉妹とは違ったタイプの仲のよさですね」

 榛名はいそいそとキーボードや琴、その他の様々な楽器や機材をセッティングしている。
 実はここにある楽器や機材は、すべて榛名が設計したものである。
 榛名いわく、奏でたい音、演奏したい曲、そういったものを心の中で想い描いているうちに、必要となる楽器の設計図が頭の中に浮かんでくるのだそうだ。
 そうやって描かれた設計図は、家具職人に受け渡され、楽器を建造、もとい開発、もとい製作してもらうのである。
 そして家具職人さん達は言う、これは神がつくりし設計図だと。
 まったくもって無駄がなく、バランスがとれすぎていて怖いくらいだと言う。
 もしこの設計図が世に出て広まったら、音楽業界に革命が起こる! と家具職人さんは語る。
 そんな神の設計図を元にして作られた楽器や機材は、もはや芸術品ともいえる完成度で、究極かつ至高の名器である。
 値段をつけようにもつけられないほどの価値がある。
 だからだろうか、人の限界を超えた演奏をしても、楽器は壊れるどころかビクともしない。
 どんなに凄まじい速弾きをされても、ギターとベースは生真面目なほどに正確な音を奏で続けてくれる。

「榛名さん、今回の曲、すっごくいいですね。スリリングさと胸熱感が巧みに混在していて、気持ちが上がりまくりだよぉ」

「おう! 超俺好みだぜぇ! こういうの待ってたんだよなぁ。さすがは榛名だぜ、超アゲアゲのテンションMAX超えの120パーセントだぜ!」

「もう、天龍ちゃんったらバンドリーダーに向かって呼び捨ては失礼よぉ。でも気持ちはわかるなぁ。いままでの曲と比べて、勇気がすっごく湧いてくるもん。勇気だけが友達って感じで、すっごく頑張れるよぉ」

 榛名は「ありがとう」とひとこと言うと、静かに目を閉じた。
 すると、榛名の雰囲気が変わった。
 まるで静かに燃える青い炎のようである。
 内にとてつもないエネルギーを内在させているのが伝わってくる。
 そして榛名はゆっくりと目を開く。
 榛名は別人のようになっていた。
 触る者みな傷つけてしまうような、鋭すぎる日本刀のようである。
 そんな榛名を見て、愛宕はスティックを鳴らしながら、ワン、ツー、スリーと言い放つ。


 そして、演奏が始まった――


 四人は恐ろしいほどの気迫で音を奏で、人の限界を超えた超々テクニックを駆使して楽器を打ち鳴らす。
 まるで四人の魂が繋がっているかのような、ありえないほどの一体感で音が重なり合っている。
 素晴らしい!
 素晴らしすぎる!
 聞く者の胸を問答無用に熱くさせ、感動の渦潮に巻き込んでしまうような、人の心を掴んで離さない絶対的な魅力に溢れている。
 しかし、四人は決して納得しようとしない。
 完璧とも言える演奏をしているようにしか見えないだが、それでも妥協をいっさい許さない四人は、何度もトライアンドテストを繰り返し、更に高みを目指そうとする。


 もう何百、いや何千回演奏しただろうか――


 早朝から始まった演習、もとい演奏だが、外は完全に日が落ちている。
 しかし、それでも終わりが見えてこない。
 確実にいいものになっているのだが、それでも納得はしないし、妥協しようとはしない。
 よって、夜戦に突入!
 四人は間宮さんお手製のドリンク剤を飲み干し、伊良湖さんお手製の総合栄養食なブロックバーを咥え喰らいながら、終わりなき演奏を続ける。

 トライ! アンド、テスト!

 トライ! アンド、テスト!

 サーチ! アンド、デストロイ!

 …もとい
 トライ! アンド、テスト!

 空になったドリンク剤のビンがそこら中に転がり、ブロックバーの箱が至る所に散乱している。
 演奏をしては栄養補給をして、そしてまた演奏をする。
 あまりにも凄まじい鬼気迫る勢いの演奏は、休みなく続けられている。
 演奏している四人は、全身がびっしょりになるほどの汗をかいている。
 身体中の水分が汗になって流れ出て、もはやトイレに行く必要がないほどである。
 実際、もう何時間も演奏し続けているのに、誰もトイレに行こうとはしない。
 そんなどろどろの極限状態になっても、四人は演奏を続ける。
 ゴールがいまだ見えない演奏は、いつまででも続いていく。


 ピッキィィィィィィンッ――


 四人はハッとする。
 四人の頭の中で何かが走り抜けた。
 四人は仕切りなおすように楽器を構え直し、静かに息を吸いながら目を閉じた。

「これ、ラストになるな。ぜってぇ」

「そうねぇ、そういう予感を感じたわねぇ」

「パンパカパーン! 遂にここまで来たって感じだわ」

 榛名は目を閉じてゆっくりと息を吸い込み、三人に向かって話す。

「みんながいま感じているとおり、きっとこれがラストになります。だから、この演奏に全てを注ぎ込んでくださいね。みんなの全部を」


 そして最後の演奏が始まった――


 その演奏は今までの集大成とも言える、最高の演奏であった。
 数えきれないほどの演奏を繰り返し、そのたびにトライアンドテストをし、アレンジと改良を加え、そして遂に完成した。


 最後の演奏が終わる――


 演奏が終わると同時に、四人は事切れたかのようにその場に倒れ込んだ。
 もはや立っていることすら出来ない。
 それほどまでに四人はすべてを出しきったのである。
 いつの間にか夜は明けていて、日が昇り始めていた。
 夜戦は終わったのだ。

「無事、帰投だな。よく頑張ってくた」

 いつの間に現れたのか、倒れ込んでいる四人の前に提督がたたずんでいた。

「これ……マスターテープです……」

 もう声を出すのも限界といった榛名はぷるぷると震える手で、最後の演奏を録音したマスターテープを提督に差し出した。

「確かに預かったぞ」

 提督は榛名の傍らで膝をつき、マスターテープを受け取った。
 榛名はニコッと笑うと、そこで力尽きてしまい、バタッと突っ伏してしまう。
 そしてそのまま死んだように眠ってしまった。
 他の三人も死人のように眠ってしまっている。

 撃沈!

「お疲れさま。今はとにかく休んでくれ。あとで打ち上げしような」

 提督は四人に毛布を掛け、スタジオを後にした。

 ――――

 ――

 ―

『これが今回の成果物の音データとなります。現物のテープはすぐにそちらへお送りいたしますので』

『うむ、ご苦労であった』

 通信室にいる提督は、マスターテープに録音された榛名達の演奏を流している。

『毎回素晴らしい曲を作り上げてくれるな。優秀な部下を持ったものだ』

『彼女らにお褒めの言葉をいただいたと伝えておきます』

『そうだ、君に聞きたいことがあったのだ』

『ッ? なんでしょう?』

『いつもテープと一緒に同封されているメッセ―ジカード……これは何かね』

『すみまえん、出すぎた真似をして……しかし、そのくらい彼女らも頑張ってくれたので』

『……うむ、私の質問に答えているようには聞こえないのだが……とりあえず、あいわかった』

 通信が切れる。
 提督はマスターテープを大きな茶封筒に入れ、そして一緒にメッセージカードを同封した。

“あたしらの音を聞けぇぇえッ!”

 こうして艦これのBGMは作られているのである。
 ……かどうかは不明である。


(任務完了)

目次はコチラ


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