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黒き艦娘、闇艦娘との闘いの火蓋が切って落とされる!
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【艦これ】艦隊これくしょん・闇 激戦!深海の亡霊、闇艦娘との闘い
第1章:闇艦娘との邂逅



 国内屈指の海軍兵学校。
 この学校でトップに入ることは、国内トップであるのと同意である。
 そしてこの学校には、特に抜きんでた才能を持った4人の若者がいた。
 しかしこの4人、あまりにも特出した存在であった為に、正規のエリート出世コースからは外れた道を歩むことになる。
 同時期、軍では秘密裏に極秘中の極秘プロジェクトが始動していた。
 4人の若き軍人は知らなかった。
 この極秘プロジェクトの中心人物として、軍が4人に目をつけていたことを。
 ときは過ぎ、海軍兵学校を卒業する日が訪れた。
 この日をさかいに、4人は数奇なる運命への道を歩むことになる。

 ――――――

 ――――

 ――

「提督ッ、いつでも出撃できるわよ! はやく出撃しましょう!」

「そ、そうか? 補給は済んでるか? 耐久力は満タンか? 疲れている者はいないか?」

「補給済み、耐久力満タン、みんなキラキラ、いつでも出撃可能! 準備万全よ!」

 第一艦隊の旗艦である五十鈴は、うずうずした様子で提督である俺の出撃命令を待っている。
 これでは俺が命令しているのではなく、五十鈴が俺に命令しているようなものだ。

「そうか、なら出撃といくか」

 五十鈴はワーイと両腕を上げて喜び、そして俺に敬礼をしながら言う。

「五十鈴、出撃します! 五十鈴に任せて!」

 五十鈴は颯爽と司令官室を飛び出していき、第一艦隊の艦娘達を港に集合させる。
 俺は軽く溜息をつき、ゆっくりと椅子に座った。
 そして目を静かに閉じる。

『提督、全員揃ったわ』

 俺の頭の中に五十鈴の声が響く。
 艦隊を組んでいる艦娘達とは、旗艦の艦娘を通して心の中で会話することが可能である。
 詳しい理屈はわからないが、科学者が言うには、俺と旗艦の艦娘とはテレパシーというもので繋がっているらしい。
 そして旗艦の艦娘がアンテナ代わりとなって、艦隊の他の艦娘とも会話が可能なのだ。
 つまり旗艦は、俺と他の艦娘達とを繋ぐ基地局の役割を担っている。
 そのため旗艦の艦娘が大きくダメージを受けると、俺とのテレパシーが途絶えてしまうので、帰投を余儀なくされてしまう。
 正直、俺も詳しいことは知らないので簡単な説明しかできないが、とにかく俺は司令官室にいながら艦娘達に命令を出せるのだ。

『それでは出撃を開始する。いいかみんな、全員ぶ……』

 俺が話し終わるのを待たずに、鈴谷がつっこみをいれる。

『全員無事に帰投すること! っしょ? もう聞き飽きまくりの耳タコなんですけど~』

『鈴谷ったら、そういうこと言わないの。ねぇ、比叡姉さま……比叡姉さま?』

『んぅ……はッ! 何ですか!? 寝てません! 寝てませんてばぁーッ! って、何か言ったか、榛名』

『やっぱり寝てらしたのね……んもう、霧島からも何か言ってやりなさい』

『マイク音量大丈夫? チェック、1、2……よし。提督、聞こえてます?』

『んもう、霧島ったら……赤城さん、みんなに何か言ってやってください……って、何を食べているのですか?』

『ンッガッフッフッ……え? 何も食べてなんかいませんよ? ちょっと小腹が空いて……なんてことは絶対にないですよ?』

 艦娘達の会話が俺の頭の中に流れ込んでくる。
 第一艦隊のメンバーは旗艦に五十鈴、そして順番に鈴谷、比叡、榛名、霧島、赤城である。

『ゴホン……それでは、みんな。共に行こうぞ激戦の海へ!』

『出撃します!』

 艦娘達は海に向かって走り出し、そのまま海に向かって跳び上がる。
 そのまま海へと落下する艦娘達……とはならず、艦娘達は海上ふわりと浮遊している。

 艦娘――
 軍艦の魂を抱きし武装乙女、と俺は聞かされている。
 艦娘は存在自体が極秘中の極秘なので、艦娘の提督である俺にすら情報はほとんど入っていない。
 艦娘達が言うには、軍艦の魂が戦闘へと駆り立て、戦地へ赴かせるそうだ。
 そして艦娘には軍艦の記憶が断片的に残っていることがあるらしい。
 軍艦の魂は艦娘に憑依し、軍艦と同じスペックの能力を得ることができる。
 これを艦娘達は憑着と呼んでいる。

“ぶぅぅぉおおんッ”

 艦娘達の頭上に提督である俺が現れ、仁王立ちになって浮遊している。
 俺の本体は司令官室にいる。
 艦隊の上にいる俺は魂のような存在で、一種の幽体離脱のような現象が起きている……と、科学者に説明されたことがある。

『んんん? あれ、なぁに? ……あれって艦娘だよね~?』

 鈴谷は目を細めて海の上にいる艦娘を見つめる。
 母港からほとんど離れていない目と鼻の先のような近距離に、艦娘がいる。

『ん? んん? んんん? うわッ、あれって、マジやばじゃん?』

 海上を浮遊している艦娘は、真黒い衣装に身を包んでいる。
 なによりも驚かされたのは、海上にいるのは軽巡洋艦長良型2番艦、五十鈴である。

『これから出撃? ちょうどよかった、探す手間が省けたわ』

 頭の中に声が流れてくる。
 真っ黒い衣装の艦娘がテレパシーを使って声を飛ばしてくる。
 榛名は鋭い目で真っ黒い衣装の艦娘を睨みつけ、身構える。

『あなたは誰? 何者?』

 真っ黒い衣装の艦娘はザザァッと海上を浮き進み、こちらにやってくる。
 彼女がこちらに近づくにつれ、彼女が只者ではないのが伝わってくる。
 彼女から発せられている禍々しいオーラは、ひどく不安で、不快で、不気味に感じる。
 榛名以外の艦娘達も彼女の只ならぬ雰囲気にあてられ、身構えている。

『ふふッ、そんなに警戒しなくてもいいでしょう?』

 俺達の目の前にまでやってきた真っ黒い衣装の艦娘は、ツインテールをなびかせて可愛らしくおじぎをする。

『はじめまして、五十鈴・黒です。よろしくね。』

 五十鈴・黒は庁舎に向かって指をさす。

『ひとつ聞いてもいいかしら。あれって司令官室よね?』

 庁舎には司令官室がある。
 そして五十鈴・黒は俺の本体がいる司令官室を指さしている。
 五十鈴・黒が指をさす動きに連動して、五十鈴・黒が装備している8インチ三連装砲も動き、そして司令官室に狙いを定める。

『ふふッ、これで任務完了ね』

 五十鈴・黒の背後に8インチ三連装砲の姿が映し出される。
 艦娘に艦の魂が宿っているのと同じように、艦娘が搭載している砲などの装備品にも魂が宿っている。
 砲撃するときや電探が発動するときには、装備品に宿っている魂が空中にその姿を映し出す。
 つまり8インチ三連装砲の姿が空中に映し出されたということは、砲撃準備が完了して砲撃寸前であることを意味する。

『撃てぇッ!』

 そして五十鈴・黒の手によって司令官室が砲撃される。

“どごぉぉんッ”

 鼓膜が破けそうな低音と高音が混じった凶暴な爆発音が、びりびりと周囲を震わせる。
 しかし砲撃を受けたのは司令官室ではなく、五十鈴・黒であった。
 直撃を免れてダメージこそなかったものの、五十鈴・黒は黒くすすけてしまう。

『ひどいわね、レディに対してずいぶんと手荒い挨拶じゃない』

『ひどいのはどっちよ! いきなり攻撃してきたのはそっちでしょ! しかも提督に向かって! ふざけんじゃないわよ!』

 五十鈴がとっさに反応し、五十鈴・黒に砲撃をしかけていた。
 そして五十鈴は五十鈴・黒に向かって進行する。

『この私、五十鈴があなたの相手よ! 覚悟なさい、私の偽物さん!』

『ふふッ、偽物? さぁて、偽物はどっちかしら?』

 五十鈴と五十鈴・黒の一騎打ち。
 2艦の長良型2番艦が向かい合い、睨み合っている。

『五十鈴には丸見えよ? 20.3センチ連装砲用意ッ! 撃てぇッ!』

 五十鈴の背後に20.3センチ連装砲が映し出され、五十鈴・黒に狙いを定める。
 そして激しい轟音と共に砲弾が発射された。
 五十鈴の先制攻撃は、見事、五十鈴・黒に命中した。
 五十鈴・黒は砲撃による爆発に巻き込まれ、激しい爆音と爆風が周囲を襲う。

『ふふッ、何かしら? もしかして攻撃をしたのかしら?』

 五十鈴・黒は無傷であった。
 直撃を喰らってもノーダメージ、五十鈴は困惑する。

『ウソ……そんな、ウソでしょ? 直撃で無傷だなんて……』

『あら、ウソに見える? ちゃぁんと目を開けて私をご覧なさい。まぎれもない現実よ?』

 五十鈴・黒は五十鈴に向かって砲を動かす。

『今度は外さないわよ。8インチ三連装砲用意ッ! 撃てぇッ!』

 五十鈴・黒の背後に禍々しい姿の8インチ三連装砲が映し出される。
 轟音と共に発射された砲弾は五十鈴をかすめ、そのまま海上に落ちて爆発した。
 しかし五十鈴は砲弾がかすった個所に穴が開き、その周囲が黒く焦げて真っ黒い煙を上げている。

“小破”

 少しかすっただけで小破させられてしまう五十鈴。
 五十鈴の着衣は少しだけ黒くすすけ、右肩のあたりから真っ黒い煙が上がっている。

『ウソでしょ? ほんのちょっとかすっただけなのに……こ、こんなにダメージがあるの?』

『だからウソじゃないって言っているでしょ? 現実を見れない子にはおしおきよ?』

 五十鈴・黒の背後に怪しげに黒光りする21インチ魚雷後期型の姿が映し出された。

『喰らいなさいッ』

 五十鈴・黒が魚雷を発射する。
 魚雷はしゅるしゅるッと凄い速さで海内を突き進み、五十鈴はなすすべなく魚雷が被弾する。
 悲痛な轟音と共に五十鈴は大爆発を起こし、五十鈴は大きく吹き飛ばされてしまう。
 五十鈴は今にも沈みそうなほどに大きく損傷し、真っ黒い煙を至る所から上げて沈黙する。
 そして五十鈴は着衣をぼろぼろにされて、全身が黒くすすけている。
 至る所から真っ黒い煙を上げながら、五十鈴は海上に倒れ込んでいる。

“大破”

『どういうことなの? ……私、改二なのよ? あなたと私、いったいどれだけレベルが違うっていうの?』

 五十鈴・黒は海上を滑り、五十鈴の元に進み寄る。
 そして足元で倒れている五十鈴をさげすむような目で見下ろす。

『レベル? そうね、確かに違うわね。だって私、レベル3だもの』

 五十鈴はエッと驚いた顔をして五十鈴・黒を見上げる。

『ふふッ、レベルが格下の相手にぼろ負けするのって、どんな気持ちかしら? 私、そういう経験が無いから、是非教えてもらいたいわ』

“ずどごぉぉぉおおんッ”

 五十鈴・黒が被弾する。
 鈴谷が五十鈴・黒に20.3センチ連装砲を発射した。

『ふふッ、少しだけど損傷したわ。やるじゃないアナタ。このダメ軽巡娘より少しは楽しめそうね』

『そういう人を見下す態度、うち超ムカつくんですけど。そういう奴ってマジ嫌いなんだよね~』

 五十鈴・黒はクスッと笑んで鈴谷に向かって砲を動かす。

『おっと、危ないわね』

 五十鈴・黒の目の前を46センチ三連装砲の砲撃がかすめ飛んで行った。
 榛名が五十鈴・黒に向かって砲撃した。

『あなたの相手は私達全員よ! 例え相手がひとりであろうと、私達は全力で敵を叩き潰すわ!』

 軽巡である五十鈴・黒に対し、重巡が1艦、戦艦が3艦、正規空母が1艦、圧倒的な存在感で向かい合っている。
 しかし五十鈴・黒は涼しい顔をして艦隊を眺めている。

『そうね、面倒だからまとめてしらっしゃい。全員すみやかに轟沈して差し上げるわ』

 赤城は五十鈴・黒に照準を合わせる。
 そして赤城の背後には数十機もの彗星が現れ、五十鈴・黒に向かって彗星による艦爆隊が飛び立った。

『ふふッ、私、空母って好きなの。だって絶望する顔が素敵に笑えるんだもの』

 五十鈴・黒は8インチ三連装砲に真っ黒い弾を込めた。

『ふふッ、喰らいなさい。撃てぇッ!』

 五十鈴・黒が発射した弾は宙で爆発し、大量の子弾が艦爆隊を襲う。
 子弾は見事なまでに艦爆隊に命中し、五十鈴・黒を攻撃することなく撃ち落とされてしまう。

『そ、そんな……』

 無残にもすべての彗星が撃ち落とされ、艦爆隊は全滅してしまう。

『さぁ、全部の艦載機を発艦なさい。全て撃ち落としてあげるわ』

 赤城は言葉を失った。
 残る流星や零式艦上戦闘機52型を発艦させても、彗星と同じように撃墜されてしまうであろう。
 赤城はなすすべなく、その場にへたりこんでしまう。

『あはははははッ! そう! その顔よ! その絶望したヘタレ顔がたまらなく素敵よ! 本当に笑えるわ! あははははははッ! どうせなら全機撃墜されてから絶望しなさいよ、情けないわねぇ』

 不敵に笑い上げる五十鈴・黒に向かって、比叡と霧島が砲の準備をする。
 ふたりの背後に46センチ三連装砲が浮かび上がり、同時に砲撃を開始した。
 46センチ三連装砲の同時砲撃が五十鈴・黒を襲う。
 しかし五十鈴・黒は避ける気配がない。

“どごどぉおおぉぉぉおおおッ”

 轟音と共に激しい爆発音と爆風が吹き荒れ、五十鈴・黒は真っ黒い煙に包まれる。
 砲撃は五十鈴・黒に直撃したと思われる。
 煙が晴れると、そこには無傷の五十鈴・黒がいた。

『ふふッ、大火力もこれじゃあ台無しね』

『ウソだろう?! これでも無傷なのか!?』

『そ、そんな馬鹿な!』

 比叡と霧島は信じられないという顔をして五十鈴・黒から距離をとる。
 しかし五十鈴・黒からは逃げられなかった。

“ずどどぉぉぉおおおッ”

 五十鈴・黒の8インチ三連装砲が火を噴く。
 比叡と霧島は避けきれず、ふたりとも被弾してしまう。

『きゃあああぁぁぁッ』

 ふたりの悲鳴がこだまする。

“中破”

『霧島! 比叡姉さま!』

 中破してしまった比叡と霧島の元に艦を寄せる榛名。
 そして見下すような目で中破したふたりを眺める五十鈴・黒を、榛名は鋭い目で睨みつける。

『闇雲に撃っても無駄なようですね』

 榛名は五十鈴・黒と正対する。

『五十鈴・黒さん、でしたっけ? 電探を搭載していますね』

 五十鈴・黒は関心したように笑い上げる。

『ふふッ、ご名答ッ。そうよ、このふたつがあればほとんどの攻撃は回避可能なの』

 五十鈴・黒の背後に真っ黒い22号対水上電探と21号対空電探が映し出された。

『この電探・黒があるかぎり、あんた達の攻撃なんて当たらないわよ』

 見下すように笑う五十鈴・黒。

『そうとは限らないわ』

 榛名は静かに目を閉じ、意識を集中させる。
 榛名の周辺にキィンと張りつめた空気が流れる。
 そして五十鈴・黒は榛名が作りだした空気に包まれる。
 次の瞬間、榛名はカッと目を見開き、砲撃を開始する。
 榛名の背後には、ほのかに輝く46センチ三連装砲が映し出される。

『榛名! 全力で参ります! 撃てぇッ!』

 榛名に搭載されている三連装砲が火を噴く。

『ふふッ、当たるもんですか』

 五十鈴・黒は余裕の表情で腕組みをしながら、榛名の砲撃を受ける。
 激しい爆発と共に轟音が鳴り響き、周囲が真っ黒い煙に包まれる。

『う、ウソでしょう……こ、こんなことって……』

 煙が晴れる。
 そして姿を現した五十鈴・黒は、煙を上げながらところどころが損傷、破損している。

“小破”

『なんで? 電探・黒の故障? それはないわ、正常に機能してるもの……そんな、ウソよこんなの……』

 砲撃が命中した五十鈴・黒はショックのあまり茫然としている。

『あら、ウソに見える? ちゃぁんと目を開けて自分をご覧なさい。まぎれもない現実よ? ……これはあなたが五十鈴ちゃんに言ったセリフよ。あなたにそのままお返しするわ』

 五十鈴・黒は四つん這いの格好でうなだれ、わなわなと肩を震わせている。

『ウソ……現実……これが現実? いやよ、そんなの……私は五十鈴・黒! こんな未完成中の未完成な輩に敗北する私じゃないのよ……こんなの信じない! 絶対に信じないわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 突然、五十鈴・黒は真っ黒い強大なオーラに包まれた。
 禍々しいオーラが充満し、五十鈴・黒の周辺がひずんで見える。
 五十鈴・黒はふわりと浮遊し、光を失った目で庁舎にある司令官室を睨みつける。

「そうよ……そうよ! 私には任務があるのよ! それさえ達成すれば、あんた達なんかに用は無いわ!」

 五十鈴・黒の背後に8インチ三連装砲が映し出される。
 先ほどまでの三連装砲とは違う、ひどく禍々しいオーラに包まれた、畏怖の念を容赦なく発している不気味な8インチ三連装砲。

『8インチ三連装砲・黒、発動ッ!』

 8インチ三連装砲を包んでいるオーラが濃縮化し、8インチ三連装砲の砲口に流れ込んでいく。

『もう出し惜しみはしないわ! 8インチ三連装砲・黒、撃てぇッ!』

 五十鈴・黒がそう言い終える直前、五十鈴・黒は大きく吹き飛んだ。
 不意の砲撃を受けた五十鈴・黒は、轟音と共に大きく損傷する。

“中破”

 五十鈴・黒は海上に倒れ込む。

『やだ、痛いじゃない! だ、誰よ! こんな卑怯な真似するのは!』

『おんまちどぉなのネー! やぁっと修復がコンプリートねー!』

 戦艦金剛型1番艦、金剛が姿を現す。

『私たちの出番ネ! フォロミー! 皆さん、ついて来て下さいネー!』

 金剛は海上で仁王立ちになって、おもいきり声を張り上げる。

『いくっよぉ! 我がスリー妹たちぃ! 一気に畳みかけるネー!』

 金剛を真ん中にして比叡、榛名、霧島が横並びに艦を寄せる。、
 46センチ三連装砲を3門搭載している金剛四姉妹。
 その全てが五十鈴・黒に向けられる。

『さぁ、覚悟しやがれネー! 46センチ×12で562センチ砲ネー!』

 比叡は溜息をついて金剛につっこむ。

『金剛お姉さま、計算が違います。正しくは552センチ砲ですよ』

 霧島は更に深い溜息をついて比叡につっこむ。

『そもそも単純な足し算で砲の大きさ変えちゃまずいでしょ? それを言うなら46センチ三連装砲一斉12射撃! です』

『とにもかくにも! 我ら金剛フォー姉妹のウルティメイト砲撃! 喰らうがいいネー!』

 金剛四姉妹の背後に12門の46センチ三連装砲が映し出される。
 その三連装砲が全て、五十鈴・黒に照準を合わせる。

『いっくよぉ! レッツ、シューティーーーングッ!』

 46センチ三連装砲12門が一斉に火を噴く。
 4人の意識は完全にシンクロし、五十鈴・黒が搭載している電探・黒が無意味になるほどに、砲弾は五十鈴・黒に向かって飛び交う。

“ずどどどどどごぉぉぉぉぉぉおおおおおんんんッ”

 物凄い轟音が鳴り響き、砲撃の威力が凄すぎて周囲に大きな波が発生する。
 そしてとてつもない爆風が吹き荒れ、周囲にいる艦娘は激しく揺らされる。
 砲撃は全て五十鈴・黒に被弾した。
 回避できずに直撃を喰らった五十鈴・黒は大爆発を起こし、五十鈴・黒本体は海に投げ出されてしまった。

“大破”

 海に落下……するものと思われた五十鈴・黒は、突如現れた艦娘に抱き止められた。

『あらあら、こっぴどくやられちゃったわねぇ』

 謎の艦娘は大破してしまった五十鈴・黒の側に降り立ち、五十鈴・黒を海上に立たせた。
 五十鈴・黒はぼろぼろで衣装もほとんど残っておらず、装備品も無残に破壊されている。
 もはや立っているのがやっとの様子。
 それだけの瀕死のダメージを受けながらも、五十鈴・黒は謎の艦娘を睨みつけて声を荒げた。

『チッ、まさかあんたが来るなんてね! 愛宕・黒』

 真っ黒い衣装に身を包んでいる愛宕・黒は、愛宕とうりふたつ、同一人物としか思えないほどに似ている。

『あら、不服かしら?』

『不服も不服、超不服よ! この化け乳娘!』

『うふふ、そうやっかまないの、半端乳娘ちゃん』

『むっきー! 腹立つ! 半端って何よ! 半端じゃないもん! 立派だもん! むかつく! むかつくぅッ! でかすぎおっぱい、大ッッッ嫌い!』

 悪態をつく五十鈴・黒の頭を撫で撫でする愛宕・黒。

『そんなこと言っていいのかしら? そもそもこの任務、あなたじゃなくて私が命令を受けたものなんだけど? 勝手なことをして、お父様に叱られるわよ?』

『うるさいわね! 結果を出せば文句はないでしょ! 結果さえ出せれば、父さまだって私を褒めてくれるわ!』

『でも残念な結果しか出せなかったみたいね』

『うぐぅ……』

 五十鈴・黒は言葉を失い、ぐうの音を漏らす。

『これって重大な命令違反よ? 結果は出せない、命令違反はするでは、お父様はがっかりされるんじゃないかしら?』

『うぐぐぅ……』

 涙目になっている五十鈴・黒。
 必死に堪えているが、今にも泣き出しそうである。

『まったくしょうがないわねぇ。特別にお父様には黙っててあげるわ』

『ほんと!? ……言っとくけど、貸しだなんて思わないでよね!』

『はいはい、まったくもう、可愛くないんだか、可愛いんだか』

『何か言った!?』

『いいえ、何も申してなんかいませんわよ』

 五十鈴・黒の頭を撫で撫でしている愛宕・黒は、五十鈴・黒にスパンッと手を叩き落とされた。
 愛宕・黒はやれやれと両の手のひらを上に向け、両肩を上げる。

『さあ、お父様の元に帰りましょう』

『そうね、はやく父さまに会いたいわ。傷ついた五十鈴をたくさん慰めてもらうんだからッ!』

『んもぅ、意外と甘えん坊なんだから』

 五十鈴・黒と愛宕・黒は艦娘達に背を向け、帰ろうとする。

『おおっとぉ、おふたりさん! ただでホムカミできると思ったら大ミステイクねー!』

 逃がすものかと、ふたりを追う艦娘達。
 それを見た愛宕・黒は、溜息をついて残念な顔をする。

『あらあら、せっかく見逃してあげようと思っていたのに』

 愛宕・黒の背後に3門の8インチ三連装砲が映し出される。

『喰らいなさい、おバカな身の程知らずさん達』

 追撃する艦娘達に向かって、愛宕・黒は8インチ三連装砲の3連射を行う。

“ずどごぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉッ”

 とてつもない轟音が鳴り響き、艦娘達は爆発に巻き込まれる。
 直撃こそしなかったが、目の前で大爆発が起こり、甚大なダメージを受けてしまう。

『きゃあああああぁぁぁぁぁッッッ!』

“大破”

 愛宕・黒の砲撃は物凄い威力で、五十鈴・黒が問題にならないほどに強大であった。
 ノーダメージであった艦娘でさえ、たった一撃で轟沈寸前である。

『私の任務はそちらの提督さんを葬り去ることでしたが……今日のところは帰りますわ。電探・黒が通用しない子がいたり、46センチ三連装砲の一斉12射撃なんていう物騒な攻撃を見れたり、なかなかに楽しませてもらったので』

 五十鈴・黒は自分を大破させた艦娘達を嘲笑いながら、吐き捨てるように言う。

『あんた達、わかってる? この化け乳娘こと愛宕・黒は、わざと砲撃と外したのよ? 化け乳娘が本気で攻撃したら、あんた達どころか鎮守府全体が焼け野原になってるところよ!』

 愛宕・黒は五十鈴・黒の頭をぽこんと殴る。

『失礼ね! そんな絨毯爆撃みたいな攻撃、できるわけないでしょ! この半端乳娘!』

『何よ化け乳娘! せっかく褒めてあげたのに!』

『褒める? けなすの間違いでしょう!』

 ふたりはいがみ合いながらぷくぅと頬を膨らませて、ふんっと言ってそっぽを向いてしまう。

『それではごきげんよう。またお会いいたしましょう』

『あんた達、今度こそ私が息の根を止めてやるからね! 海の底で深海魚のお家になるといいわ! 覚悟してなさい!』

 ふたりの闇艦娘は帰投すべく、艦娘達に背を向けて発進する。
 大破した艦娘達は、もはや追撃が不可能であった。

『ゴーヤ、聞こえるか? このまま敵さんを帰すわけにはいかない。雷撃準備だ』

『ゴーヤにおまかせでち! このおっきな魚雷、61センチ五連装(酸素)魚雷でお見事に轟沈でち!』

 海中で密かに待機していた伊58は、愛宕・黒に照準を合わせる。
 そのときである、突然俺の頭の中に声が送られてきた。

『悪いことは言わん。その雷撃、即刻中止せよ。さもなくばこちらも反撃せねばらならくなるぞ?』

 初老というには失礼なくらいに力強い声が、俺の頭の中で響き渡る。
 声を聞けばわかる、これは生粋の軍人の声だ。
 しかもかなりの手だれである。

『若いの、戦況をよく見て命令を下せ。反撃を喰らえばどのような惨状になるか、それがわからぬほどボンクラではあるまい、若き提督よ』

『誰だ! その口ぶりからすると、黒い艦娘の提督のようだな』

『我は海提。深き海の闇の使者よ。汎用人型決戦兵器、黒き艦娘こと闇艦娘を操る闇提督、それがワシじゃよ』

 海提と名乗る者の声を聞いていて、俺はあることに気がつく。

『この声、どこかで聞いたような……そうだ、以前ある人物の肉声テープを聞かされたことがあって……その人物のしゃべり口調、声色、声質……何より、声から伝わる異常なまでのプレッシャー……まったく同じものだ……その人物の名は……山本五十六提督』

 山本五十六提督――
 最終階級は元帥海軍大将。
 栄典は正三位大勲位功一級。
 俺のような下っぱ提督なんて比べものにならない、軍人中の軍人、トップオブ軍人である。
 その存在感、迫力、カリスマ性、軍人力、何をとってもこの方に勝る軍人はいないと、俺は確信している。
 他の軍人を圧倒するほどの軍人力を誇る山本提督は、世界的に見ても指折りの超ド級軍人である。

『確か史実では海軍甲事件によってソロモン諸島ブーゲンビル島で戦死したことになっていましたが……まさか生きておられたとは、連合艦隊司令長官山本五十六海軍大将殿』

『……若いの、ワシは海提、山本なにがしなどではない……深海の底深くに眠る亡霊のひとりじゃ……』

『あなたが亡霊? いや、亡霊なんかじゃない。まぎれもなく生きている人間の声ですよ。あなたの声からは軍人の魂がひしひしと伝わってきます……山本提督、なぜ深き海の闇の使者などと狂言じみた言い方をするのですか? ……山本提督? 山本提督!? 山本提督ぅぅぅッ!!』

 声が途絶える。
 海提……いや、間違いなく山本五十六提督であった。
 なぜ正体を隠すのだろうか……いや、それとも本当に別人なのだろうか……正直、声だけで判断するのは無理がある。
 俺は宙を見つめながら、表情を曇らせている。

『提督ー、発射ご命令をくださいでちー』

『……発射は中止する』

『えー! 中止でちか!? そんなぁ、でち……』

 ザパァッと浮上する伊58。
 伊58はふよふよと海上を浮遊しながら、くやしそうに闇艦娘達の背中を見つめる。

『全員、帰投せよ』

 俺は力無い声で艦娘達に帰投命令を出した。

“追撃せず”


(つづく)

目次はコチラ

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