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黒き艦娘、闇艦娘との闘いの火蓋が切って落とされる!
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「そのお茶目な少女は来る日も来る日も、人目を避けるように端っこの方で隠れながら、水道水を絞ったタオルでごしごし、がしがしと、全身を拭いたのですぅ……俗に言うタオル風呂ですぅ……心地の良い適温のお湯に浸かることもできず、冷たいタオルで身を震わせながら、タオルが人肌の温かさになるまで全身を拭いて……石鹸で泡立てたタオルで拭うこともできず、ごわごわに毛羽立ったぼろぼろの濡れタオルで素肌を擦り上げる毎日……少女はいつも最後には、全身を拭ききったタオルで、頬を濡らしている涙をぬぐい取るのですぅ……」

「本当に底辺……じゃなくて、大変だったんだね、ミーノちゃ……じゃなくて、その女の子」

 ミーノはぴくんと眉を動かすも、何事もなかったかのように話を続ける。

「その愛くるしい少女は、本当にもう、どうしていいのかわからなくて、どうしようもなくて、どうにもならなくて、心細くて、ひもじくて、何度もくじけては立ち上がって、何度も泣いて、寒いおもいをして、暑いおもいをして、冷たいおもいをして、熱いおもいをして、とにかくもう、辛くて辛くて………………うわああぁぁああぁぁああぁぁんッ!」

 ミーノは何を思い出したのか、感極まって泣き出してしまった。

「えええぇぇぇえええ!? いきなりの号泣モード?! いったい何がしたいの、ミーノちゃん」

 凛香は泣きじゃくるミーノに、いないいないばぁをしたり、よしよしと抱き締めたり、頭を撫でてあげたりと、泣きやますのに必死になる。

「ひっく、ひぐぅぅ……と、とにかく、そのチャーミングな少女は来る日も来る日も、大変なおもいをして、訪ね人を探し回ったのですぅ。その間、所持金を使い果たした少女は、完全ホームレスな、その日暮らしの放浪生活……もはや旅とは言えない、地獄の日々を過ごしていたのですぅ……」

 凛香はミーノの話を聞いていて、奇妙な違和感にさいなまれる。

「ちょっとまってよ、ミーノちゃん。それって変じゃない? ミーノちゃ……じゃなくて、その女の子は特別な任務を受けてたんだから、当然、資金援助があったんじゃない? っていうか、日々の生活費って必要経費でしょ? そもそもなんで、ひとりで探してたの? 人探しなんだから、単独行動じゃなくて、チームを編成して行動したほうが、全然効率がいいのに」

 ミーノから笑顔が消え、表情が曇る。

「そ、それは………………うわああぁぁああぁぁああぁぁんッ!」

 またも泣き出すミーノ。

「えええぇぇぇえええ!? またも号泣モード?! ミーノちゃん、泣きの確変に入っちゃってるの!?」

 凛香はまたもやミーノを泣きやませるのに必死になる。
 裸の凛香は、裸のミーノをだっこしたり、おんぶしたり、変顔版いないいないばぁをしたりと、まるで手のかかる乳児をあやしているかのようであった。

「わたし達、裸んぼのままで、何してんだろ……」

 状況がいまいち飲み込めない凛香を尻目に、ミーノはひぐひぐと鼻をななしながら、泣き濡れた声で話しだす。

「ひゃっく、ふぐぅ、ひゅぐふぅ……ごめんなさいなのですぅ、凛香様ぁ……実は………………うわああぁぁああぁぁああぁぁんッ!」

「えええぇぇぇえええ!? もうどうにも止まらないよお! ……んもう、こうなったら」

 凛香は泣きじゃくるミーノをお姫様だっこして、そのまま飛び上がった。

“どんぼぼぉぉおおおぉぉぉん!”

 ふたりは浴槽にダイブする。豪快すぎる風呂ダイブは、大きな水柱を立てて大洪水を引き起こした。
 ミーノは目をぱちくりさせながら、びしょ濡れになって湯に浸かっている。
 凛香も目をぱちくりさせながら、ずぶ濡れになって湯に浸かっている。

「プッ、あはははははははッ!」

 ふたりは互いに見つめ合いながら、腹を抱えて爆笑する。

「あはははははッ! で、さっきの話の続きですがぁ」

 ミーノは笑いすぎてひんひんと息を切らしながらも、話を続けようとする。

「はひゅう、そ、それで、はひぃう、その可憐すぎる少女は、実は、ひぃうう、任務を受けていたのではなくて、ひゅみゅうん、勝手に人探しの旅に出たのですぅ!」

 笑いながら語るミーノ。

「あはははははッ! それってつまり、家出同然に飛び出してきたってこと? そうなると、キン肉宮殿では、ミーノちゃん失踪事件になってるかもってこと?」

 ふたりの笑い声がフェードアウトしていく。

「そ、それってダメだよ! ダメダメだよ! ミーノちゃん、それは絶対にダメだよ!」

「うわああぁぁああぁぁああぁぁんッ! ごめんなさいですぅぅぅ!」

 驚きのあまりに声を荒げる凛香は、泣きじゃくるミーノを見て深い溜息をつく。

「それはダメだよ、ミーノちゃん……もう何カ月も帰ってないんでしょう? しかも連絡ひとつしてないんでしょう? 大事件だよ、それって……」

 ミーノはすんすんと鼻をならしながら、腕で目を拭う。

「いえ、きっと宮殿では、ミーノは仕事辛さに逃げ出したのだと、そう思われているに違いないのですぅ……わたしみたいなドジレストな娘、だれも追いかけたりはしないのですぅ……それに今日の戦いはキン肉星でも放送されたと思いますので、ミーノの無事は確認されているはずなのですぅ」

 凛香は目を背けながら話しているミーノの両肩をつかみ、まっすぐに見つめる。

「ダメだよミーノちゃん。きちんと自分から連絡をしないと! 絶対に心配してるよ!」

「あああああああ……そうですよね、やっぱり……」

 意気消沈したミーノは湯船に鼻まで浸かり、ぶくぶくと泡を立てながら困り果てた顔をしている。

“………………キィィィィィイイインッ! ずごおおおぉぉぉおおお!”

 突然、耳をつんざくような高音と、腹が押し潰されそうな低音に襲われる。
 そしてその直後、幼稚園ごと引っくり返りそうなほどの大揺れがふたりを襲う。

「きゃわあああぁぁぁあああッ!」

 ふたりは浴槽内で抱き合いながら、突然の異変に悲鳴を上げる。

「うおおぉぉおおい! ミーノや! どこじゃ!? どこにおるんじゃい?! ミーノや!」

 どたどたと廊下を踏みならす音が聞こえる。そしてミーノを探している様子の、男の声が聞こえる。


(つづく)

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