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黒き艦娘、闇艦娘との闘いの火蓋が切って落とされる!
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 マリに促され、中へと入っていくミーノ。
 後からついてきていた凛香はマリとミーノを追い越し、足早に建物の中へと入っていった。

「ああーッ、なんだかすっごく疲れたよーッ」

 建物の奥の方にある小さなリビングスペース。そこで凛香は倒れ込むように寝転がり、体育座りの格好でごろんごろんと転がる。

「凛香ちゃん、お行儀が悪いうえに、だらけ過ぎよ」

「だぁってぇ、本当に疲れたんだもん。いくらマッスルジュエルが戦いのダメージを全部持っていってくれるからって、はじめての超人バトルを連続でだもん……冗談抜きに死ぬ思いだったし、本当に死ぬかと思っちゃったよお」

 マリはやれやれな顔をしながらも、凛香とミーノに優しく笑いかける。

「そんなに疲れたのなら、ふたりでお風呂に入っていらっしゃいな」

 お風呂と聞いて、ミーノは目を輝かせた。

「お風呂ですぅ?! あああ、とっても久しぶりなのですぅ……放浪の身であった私には、とてつもなく文化的な響きなのですぅ」

 ミーノが遠い目をしながら感激している。その裏で、凛香はどんよりした顔をしていた。そして体育座りをしながら、その場から動こうとしない。

「……お風呂、嫌い」

 全くもって動こうとしない凛香に、マリは身を寄せる。

「凛香ちゃん?」

 優しい笑みを浮かべながら、マリは凛香に声を掛ける。

「……お風呂、嫌いだもん」

 両手に力を込めて、凛香はがっちりと膝を抱え込む。
 マリは腰をかがめて凛香の膝に手を置いた。そしてさもあたり前のように、軽々と凛香の膝を開いた。

「……ひぃッ」

 凛香は小さく悲鳴を上げた。
 マリは開かれた膝から顔を突っ込み、凛香に迫力のある笑顔を寄せる。

「凛香ちゃん?」

 凛香は断固拒否と言わんばかりに、身体を丸めて亀状態となる。
 まるで強固な甲羅に閉じこもった亀のように、がっちりとガードしている凛香。しかしマリはまたも軽々とガードをこじ開けた。そして凛香の顔に触れそうなほどに、マリは笑顔を寄せてくる。

「お風呂、入ってきなさい」

「……ひぃうう、承りましたあ」

 凛香は涙目になりながらその場から逃げだすように、風呂に向かって駈け出した。

「はううッ、待って下さいですぅ!」

 ミーノは期待に胸を膨らませて目をぎらんぎらんに輝かせながら、凛香の後を追った。
 “かぽーーーん”という効果音が聞こえてきそうな、昭和臭たっぷりのレトロなお風呂。
 壁と床は一面タイル貼り。つまみをカチンといわせながら回す、いかにも旧時代的な2穴式の湯沸かし器。メタル感が半端ないアルミ貼りの浴槽。
 そんな前時代的かつ絶滅寸前な風呂場で、きゃいきゃいとはしゃいでいる裸のミーノ。

「わひゃああぁッ! お風呂ですぅ! ああ、もう何日ぶり……いや、何カ月ぶりですぅ? ……あああ、全然と言っていいほどにお風呂に入れなかったミーノにとって……冷水を絞ったタオルで全身を拭くのが当たり前だったミーノにとって……文明開化の風が吹き荒れたのですぅ!」

 ミーノは涙を流しながら、愛しそうにアルミの浴槽に頬ずりをしている。
 そんなミーノを信じられないといわんばかりの顔で見つめる、裸の凛香。

「何カ月もお風呂に入らなくていいなんて……羨ましいなあ」

 ぽそりと呟いた凛香に、ミーノは目が飛び出る勢いで詰め寄った。

「ミーノが羨ましいのですぅ? お風呂に入れない日々が、そんなに羨ましいのですぅ? ……凛香様はいったいどれだけ、お風呂が嫌いなのですぅ?!」

「だって、お風呂って面倒くさいし、楽しくないし、すっごく無駄な時間を過ごしてる気がするし……だいたいお風呂に入んなくたって死んじゃうわけじゃないし、立派に生きていけるもん」

 ミーノは凛香の両肩をがっしりと掴み、ずいいと顔を寄せる。
 数センチしか離れていないミーノの顔は、笑顔であるにもかかわらず、とてつもない迫力と気迫に満ちていた。

「うひゃわああぁッ、マリお母さんより凄いかも……」

「凛香様……今からある少女の物語をお話ししますですぅ……むかしむかし、そんなに遠くない昔、あるところに、重要な任務を受けた、いたいけで可愛らしい少女がいましたですぅ」

 どう考えてもミーノのことである。凛香はプフッと吹き出してしまう。

「しょ・う・じょ・が・い・た・の・ですぅ!」

 ミーノは更に顔を寄せ、数ミリしか離れていない状態で口調を強めた。

「……ごめんなさい、もうしません」

 怯えきって涙目になっている凛香を見て、ミーノはにっこりと笑んで話を続ける。

「で! そのプリティな少女は、この広大な宇宙のどこにいるかもわからない人物を、何の手がかりもない状態で探し始めたのですぅ……そして当たり前のように、なけなしの所持金はすぐに底をつき、食糧調達すら困難な状況に陥ってしまったのですぅ……」

 真剣な顔をして語るミーノを、凛香はおっかなびっくりな顔をしながら見つめている。

「そのおしゃまな少女は三度の飯よりお風呂が好き! 食欲よりも入欲……もとい、入浴が好きなほどのお風呂好きでしたので、お風呂に入れない毎日を過ごすのは、お腹がすくのよりも苦痛だったのですぅ」

「そっか、ミーノちゃんは綺麗好きなんだねえ」

 ミーノは笑顔のまま、ぎろりと凛香を睨んだ。

「……ごめんなさい、もう言いません」

 怯えきって鼻水をも垂らしてしまっている凛香を見て、ミーノはにっこにこに笑んで話を続ける。


(つづく)

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